東京地方裁判所 昭和44年(借チ)30号・昭44年(借チ)2078号 決定
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【決定理由】(申立の要旨)
1 申立人は、相手方から、別紙目録記載の土地200.99平方米(六〇坪八合、以下本件土地という)を賃借し、同地上に家屋番号二三七番木造瓦葺二階建居宅床面積一階72.72平方米二階23.96平方米(以下本件建物という)を所有している。借地契約の現在の内容は別紙目録記載のとおりである。
2 本件土地は、着工中の環状八号線に面し、同線が完成すると、多量の交通量による振動、排気ガスを防ぐために本件建物を鉄筋に改築する必要があり、現に、最近本件土地附近においても鉄筋建物が建築されつつあるので、申立人の長男であり本件建物で歯科医を営む主文掲記の木村達雄およびその妻木村登美子に本件建物および本件土地賃借権を譲渡し、木村達雄をして本件土地上に堅固建物を建築せしめたい計画であるが、賃貸人である相手方の承諾が得られないので、本件各申立に及んだ。
(決定理由)
1 本件の資料によれば、申立の要旨として掲げた前記1の事実のほか、本件土地は、環状八号線予定線から僅々一〇米の位置にあり、すでに同線の工事は開始されており、同線が完成すれば、本件土地が騒音、震動、排気ガス等の影響を大きく受けることが当然予想され、本件土地は、すでに準防火地域に指定され、本件土地附近においても環状八号線予定線を中心として鉄筋建物が建築されつつあることが認められるので、建物の構造に関する借地条件変更の申立は、鑑定委員会の意見と同様これを認容するのが相当であり、また、本件の資料によれば、木村達雄は、申立人の長男にして、本件建物において歯科医を営み、木村登美子は同人の妻であり、申立人が本件土地賃借権を右両名に譲渡しても、相手方の不利になるおそれはないと認められるので、土地賃借権譲渡許可の申立も、これを認容すべきである。
2 附随処分
本件借地契約の目的を非堅固建物所有から堅固建物所有に変更することにより、本件賃借権は強化され、それとともに賃貸人の土地所有権は新たな制約を受けることになるが、借地法八条ノ二は土地の合理的利用を促進するためには土地所有権に新たな制約を加えることになつても止むを得ないとの趣旨で新設されたものと解すべきであるので、財産上の給付を考える場合、本件借地権の権利そのものの強化に伴う賃貸人の不利益は、これを考慮すべきではなく、借地権の強化に伴う借地権の経済的価値の変動を考慮することで足りると解するのを相当とする。鑑定委員会は、借地人に命ずべき財産上の給付は、借地権価格の差額に経過期間に対応する更新料相当額を加えたものを相当とする意見を提出したが、更新料を請求しうる法的根拠はないのであるから、経過期間に対応する更新料相当額を財産上の給付の一部とする意見には、賛し難く、財産上の給付は、借地権の強化に伴う借地権の経済的価値の変動、すなわち、借地権価格の差額を考慮すれば足りると考える。
鑑定委員会は、本件の場合建付減価率を四%とし、借地権価格を建付地価格の六九%とし、条件変更前後の借地権価格の差額は借地権価格の二〇%が相当であるとし、更地価格を一平方米七万七、〇〇〇円と評価している。借地権価格の差額の求め方は右に従うことにするが、鑑定委員会の評価した更地価格は昭和四四年一一月二八日現在のものであり、同委員会の意見書が提出された後和解を試みているうちに数ヶ月経過し、相手方の提出した中沢春比古作成の不動産鑑定評価書によれば、本件土地附近は環状八号線貫通が間近いことも影響し、地価上昇は年間二〇%ないし二五%といわれ現在、本件土地の更地価格は一平方米九万円と評価するのが相当と認められるので、建付地価格を一平方米八万六、〇〇〇円とし、鑑定委員会の意見に基づいて借地権価格の差額を求めると二三七万円(万円未満四捨五入)となるので、建物の構造に関する借地条件変更による財産上の給付を二三七万円とし、右金員支払を条件に本件借地契約の目的を堅固建物所有に変更し、借地期間を昭和七五年五月三一日までと変更することとする。
次に、借地権譲渡に伴う財産上の給付であるが、鑑定委員会は、通常は借地権価格の一〇%であるが、本件の場合、譲受人が申立人の長男夫妻である事情を考慮し、通常の財産上の給付の半額が相当であるとする。右意見は相当であるので財産上の給付を借地権価格の五%にあたる五九万円(万円未満四捨五入)とする。
右以外の附随処分をする要は認められないので、以上の理由により主文のとおり決定する。(小山俊彦)
目録
(土地賃貸借契約)
1 当事者
賃貸人 相手方
賃借人 申立人
2 借地
東京都大田区多摩川一丁目二〇八番一
宅地 395.64平方米のうち200.99平方米(六〇坪八合)
3 目的
非堅固建物所有
4 期間
昭和五一年四月三〇日まで
5 賃料
昭和四四年四月一日以降一ヶ月四、二五六円 以上